長慶寺 ちょうけいじ

長慶寺は神亀年間(724年頃)行基菩薩により開創され、金泉山慈昌院海会宮寺と呼ばれた。書恵寺が海会寺となり、大苗代村(信達大苗代)海会宮池の傍らにあったと言われ、白鳳様式の古瓦や和同開珎など出土、奈良法隆寺と同じ建築様式と推定している。

天正六年(1,578年)織田信長の兵火により伽藍は殆ど焼失したが、ただ一宇中の島にあった奥之院観音堂が類焼を免れた。
その後、慶長年間(1,596年～1,616年)豊臣秀頼の命により、大野主馬治房は観音堂と本尊の如意輪観世音菩薩を現在地へ移築し、改めて当時の年号を逆にして長慶寺と称した。のち徳川幕府の寺社政策と強い観音信仰に支えられ、岸和田城主岡部行隆公をはじめ歴代岡部公の祈願所となり、山上の地の利を生かした眺望の絶佳により、寺運は隆昌したという。その景観は徳川幕府、湯島聖堂の儒教林羅山が吟じ、元禄期和泉の史家石橋直之も長慶寺八景として葛城暮雪、淡路落日などの八景を称していた。

明治の廃仏毀釈の影響により衰退の一途を辿り、戦後は往時を偲ぶべくもないほど荒廃した。
だが、近時再び復興の気運がみなぎり、本堂、客殿の大修理、信徒会館の建設、庭園造園、さらに山門、大師堂(納骨堂)、多宝塔(開山行基堂)、本堂、三宝塔、鐘楼堂、鳳凰堂(千手観音堂)、裳階層付三重の塔など次々の建立により、山容が整いつつある。
また和泉西国二十八番、阪和西国二十五番、南海沿線七福神福禄寿、ぼけ除け地蔵尊二十三番、各霊場として再び巡拝者が訪れるようになった。

行基菩薩御自作の本尊如意輪観世音菩薩は秘仏で六十年に一度御開帳される。須弥檀両脇には多聞天、持国天が警固し向かって左脇陣には愛染明王、不動明王、右脇陣には弘法大師、役行者を奉安している。持仏堂には阿弥陀如来を、多宝塔には開山行基菩薩を、三宝塔には大日如来を、鳳凰堂には千手観世音菩薩、四天王、阿修羅を、裳階層付三重の塔には孔雀明王が祀られている。そのほか山内には西国三十三ヶ所、阪東三十三ヶ所、秩父三十四ヶ所の各観音石仏が中小数十の祠に祀られており、参道の石段も各霊場百体仏にちなみ百段となっている。伽藍が小高い丘の上に位置するため、大阪湾が一望でき、関西国際空港、神戸、淡路島をはじめ、泉州地方を眼下におさめることができる。

桜、藤棚、つつじ、もみじなどが四季折々の風情をかもし出している。特に最近は六月になると林立した木立の中で、あじさいが一斉に花を咲かせ参拝者の目を楽しませているところから、別名泉州の「あじさい寺」としても名前を知られるようになっている。